児童指導員とは、子どもと直接関わりをもち、心身の健やかな成長とその自立を支援する職種です。
児童発達支援や放課後等デイサービス事業所では、児童発達支援管理責任者の指示のもと、個別支援計画や事業所のカリキュラムに基づいて障害のある子どもの支援を行います。
他の事業所や教育機関をはじめとする多職種連携や親子関係を支援する観点から、保護者や祖父母・きょうだいなどへ支援の幅を広げる場面もみられます。
また、児童養護施設では入所する子どもの健全な成長を視野に入れ、生活のさまざまな場面での支援・指導にあたることから、保護者代わりとしての一面を持つのが特徴です。
子どもにとって身近な存在となるため、個々の気持ちに寄り添いながらも平等・公平な対応が求められるでしょう。
児童指導員の仕事は日常生活の指導をはじめ、集団活動へ円滑に参加することへの支援など多岐にわたります。
事業所の運営方針によって、個別支援計画や集団活動などにおける特色あるプログラムが組まれる事例も多いです。
児童発達支援管理責任者やほかの専門職と連携して仕事を進める機会が多いことから、協調性とあわせて積極的に意見・提案を行う姿勢も求められます。
主な仕事内容について、具体的に紹介します。
遊びや学習といったさまざまな場面をきっかけに、子どもが日常生活や社会生活を円滑に営めるように支援を進めます。
子どもの発達・成長の姿を見極め、適切なタイミングで助言指導を行うことが、健全な成長を支えるためには重要です。
児童発達支援をはじめとする通所型施設では、保護者や学校・関係機関との連携を取り、子どもの障害や特性に応じて発達上の課題達成を目指します。
一方、児童養護施設などの入所型施設では、起床から食事、入浴、就寝まで身の回りの世話を通じて生活習慣の確立を図っています。
自尊心や主体性の尊重を意識して、子どもと十分なコミュニケーションをとることも、最善の利益を考慮した支援を継続する上では大切です。
子ども一人ひとりの課題に応じて、短期目標や長期目標を設定して個別支援を進めていきます。
例えば、学校の宿題や家庭学習の手助けを通じて学習習慣を定着させたり、日々の活動を通じて感情や行動をコントロールする力を養ったりすることです。
障害のある子どもに対しては、障害の内容に応じた支援を行い、保有する感覚の活用や認知機能の発達を促します。
児童養護施設では家庭的養護を推進する一環として、集団生活の中でも個人ごとの空間・持ち物を確保する、すなわち個別化への取り組みがなされています。
施設を出所した後のアフターケアも、自立を支援するためには必要不可欠です。
子どもの自立心や社会性を養う一環として、日々の集会や給食などを通じて集団生活のルールを身につける指導を行います。
趣味や特技を活かした文化・スポーツの指導を小集団で実施することもあります。
障害がある子どもを支援する際は、障害の特性を考慮して活動プログラムを作成しますが、障害別・発達課題別のグループ分けも効果的です。
行事の企画・運営にも、児童指導員が関わる機会が多いです。
年齢や境遇が異なる子どもとの交流を通じて協調性を育む効果や、人間関係や物事の折り合いのつけ方を身につけるきっかけにもつながります。
地域との交流を取り入れると、社会への参加も促進できるでしょう。
学校や幼稚園・保育園と役割を分担しながら効果的な支援を行うために、児童発達支援管理責任者や管理者と共に情報交換を行うこともあります。
児童指導員は子どもとの関係性が近いため、生活や進路などの相談を受ける機会が多いです。
1人の児童指導員が複数の子どもと関わるため、平等な対応を前提としつつも個人の気持ちに寄り添った対応が求められます。
児童発達支援など未就学児を対象とする際は、子どもの思いを大切にした上で、伝えたいことを言葉や体の表現で引き出す工夫が必要でしょう。
保護者から相談を受けた場合、心情を受け止めながら専門的な助言を行う姿勢を持つことが、悩みの抱え込みを防ぐだけでなく、子どもとの関係性を改善するためにも重要です。
障害のある子どもを対象とする事業所では障害の受容を念頭に置きながら、子育てへの意欲を高める働きかけを行います。
乳児院・児童養護施設では、施設長や児童相談所と連携して親子関係の再構築を支援します。
児童指導員として働くためには、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準に基づき、児童指導員の資格を取得する必要があります。
この資格は、他の一般的な資格とは異なり、試験に合格して取得するものではありません。
そのため「児童指導員」という名前の資格があるわけではなく、児童指導員単体での研修制度や資格試験はありません。
その仕事に就くために必要な資格や学歴、職歴(実務経験)のことを「任用資格」といい、それを証明するための書類(卒業証明書や実務経験証明書など)が必要になります。
任用資格要件には、学歴や職歴、他の国家資格など、さまざまな条件が含まれており、多様な経歴を持つ人々が児童指導員を目指すことができるようになっています。
任用資格要件をクリアすることは、特に難しいことではないでしょう。
児童指導員の任用資格要件は複数ありますが、主なものは以下の通りです。
このほか、児童福祉施設での実務経験を3年以上積んだ後に、厚生労働大臣または都道府県知事の認定を受けることで、任用資格要件を満たす方法もあります。
これらを証明するためには、卒業証書や科目履修証明書、資格証や免許状の写しなどが必要です。
細かい条件などについては、下記のリンクを参照してください。
高校生など、将来児童指導員を目指したいと思っている人には、4年制大学の指定学部に進学するルートがおすすめです。
この進路では、児童指導員として必要な専門知識に加えて、一般的な社会人としての教養も身につけることができます。
また、就職活動においても、大学卒業の学歴があることは大きなアドバンテージです。
一部では通信制の課程がある学校もあるため、経済的な理由で働きながら学ぶ必要がある人でも、学業と仕事を両立させることが可能です。
児童指導員としての任用資格を得るための実務経験要件は、高校や短期大学を卒業した人、あるいは高卒認定試験の合格者とそれ以外の場合で異なります。
児童福祉法に基づく事業で2年以上かつ360日以上の実務経験を積むことで、児童指導員任用資格を取得できます。
児童福祉法に基づく事業で3年以上かつ540日以上の実務経験を積み、都道府県知事に適当と認められる場合に児童指導員任用資格を取得できます。
これらの要件を満たすためには、複数の事業所で実務経験を積むことも可能ですが、それぞれの事業所から発行される実務経験証明書が必要です。
さらに、高校や短期大学を卒業した場合には、卒業証明書も提出する必要があります。
ここでいう児童福祉法に基づく事業とは、以下のようなものがあります。
・第一種社会福祉事業
第一種社会福祉事業は、入所を前提とした事業で、乳児院や児童養護施設、障害児入所施設などのことです。
高度な保護や支援が必要な利用者を受け入れ、日常生活から医療面まで幅広い支援を提供します。
・第二種社会福祉事業
第二種社会福祉事業は、障害児通所支援や放課後等デイサービス、地域子育て支援、保育所や幼保連携型認定こども園などです。
こちらは入所を前提としない事業で、主に通所を通じて利用者にサービスを提供します。