コラム

療育で働く②児童発達支援管理責任者編 資格取得の方法や、療育施設での役割・仕事内容をご紹介!

障害を持つ子どもへ関わっていきたい、児童発達支援管理責任者(以下、児発管)になることを目指している人もいることでしょう。

しかし児発管になるための要件は複雑です。何をどこから手をつければいいのか、どうしたら良いのか、わからない人もいるのではないでしょうか。 

本記事では児発管の資格取得方法や、療育施設での役割・仕事内容を説明し、要点を解説したうえで将来性についても触れていきます。ぜひ役立ててください。

児童発達支援管理責任者とは?

子ども一人ひとりの発達の状況や障害による特性に応じた支援を統括していく職種です。

個別支援計画の作成をはじめとして、保護者への相談援助や関係機関との連携など、仕事内容は多岐にわたっていきます。

個別支援計画は子どもの成長に応じて、アセスメント・モニタリングを繰り返しながら作成していきます。

保護者の意向と個別支援計画とのバランスが求められているため、情報分析力や課題発見力(ひらめき)を活かせるのが特徴となっています。

日頃から子どもの状況を観察していき、必要に応じた個別支援計画を変更・提案する柔軟性も必要となっていきます。

さらに、親子がかかわる関係機関(保育所や学校、相談支援専門員など)との連携も欠かせません。

2018年4月からは、重度障害児を対象とした「居宅訪問型訪問支援」が新設され、居宅介護事業所や医療機関などの連携も求められています。

働くことのできる施設

児発管として働くことができるのは、障害のある子どもたちに対して療育や生活の自立支援などを行っている施設となっています。療育の「専門職や指導的立場」として働くことができます。

具体的には以下のような施設が挙げられています。

  • 児童発達支援センター(医療型を含む)
  • 児童発達支援事業
  • 放課後等デイサービス事業所
  • 保育所等訪問支援
  • 福祉型障害児入所施設
  • 医療型障害児入所施設

資格取得方法

児発管になるためには、以下のステップを踏んでいく必要があります。

①実務経験の要件を満たす必要があります。(2年以上の児童発達支援の実務経験が必要)

児発管になるためには、実務経験が必要です。具体的な要件は、直接支援業務または相談支援業務を3年以上経験することです。

直接支援業務は、障害のある子どもに対して介護や生活能力向上の支援や訓練などを含みます。

該当施設は児童福祉法で定められた施設である必要があります。

②都道府県の基礎研修(合計26時間)を受講する必要があります。(実務要件を満たす2年前から受講可能となりました。)

基礎研修は児発管の基本姿勢や個別支援計画の作成方法、アセスメント技術などを学ぶ2日間の研修です。

この研修を受けることで、児発管の資格取得に近づきます。

・実務経験(OJT)を2年以上積む

・実践研修を受講する

研修の申し込み方法は都道府県ごとに異なりますが、自分が勤めている施設や事業所が所在する都道府県で研修を受けることになります。

・5年毎に更新研修を受講する。

児発管の資格取得後は、5年ごとに「更新研修」を受けていくことが義務付けられています。

療育施設での役割・仕事内容

現場で児発管が行う役割、仕事や業務内容と方法を具体的にまとめてみました。

・サービス内容の把握と説明責任

利用者が事業所を利用の際には保護者や利用者に対して、自己負担額、運営規定、重要事項説明書などに記載された内容を説明し書面での同意を得ます。

そのため、サービスの内容は勿論、運営に関する、人員体制、利用者負担額、給付金の算定額、緊急時の対応方法なども詳しく把握しておく必要が有ります。

・アセスメント

サービス利用時に子どもと保護者に対してアセスメントを行います。

アセスメントとは事前評価や情報収集という意味合いを持ち、障害の内容や子供の状況などを確認していきます。

アセスメントで必要となる主な項目は、

「子ども発達状況」「子どもの興味関心事」「理解度」「家庭の環境」「今までに受けてきた支援」「関係している機関」「コミュニケーション能力」「日常生活状況」「社会性」「運動能力」「不適応や問題行動」などがあげられます。

子どもによっては、服薬状況、癇癪の有無などの確認し、緊急時の対応方法を確認する必要も出てきます。

サービスを利用していくに当たってニーズや課題を把握していくのもアセスメントで重要な項目で、利用者や保護者から出たニーズをまとめていき次の計画書の作成へ入ります。

・サービス等利用計画書の作成

アセスメントで確認した情報や、相談支援事業所が作成した支援計画書を元に、事業所でのサービスを利用する際の計画書を作成していきます。

計画書は保護者や子どもから出た課題や目標を踏まえ、総合的な支援目標と支援内容、達成時期などを記入していきます。

支援内容には個別的に行う課題と集団で行う課題を組み合わせるとより良いでしょう。

利用の日数や周期などを考慮し、平日に行えること、休日に行えること、夏休みや冬休みなど長期休暇に行えることなども設定していく必要が有ります。

長期休みに関しては余暇の過ごし方としても内容を盛り込みます。

サービス等利用計画書の作成は児発管だけで行うのではなく、他のスタッフの意見も取り入れるのが望ましいです。

・モニタリング

モニタリングの目的とは個別支援計画が適切に機能しているかどうかを確認するために、定期的に行っていきます。

お子さん本人の気持ちを反映した個別支援計画をもとに、現状を振り返ります。

モニタリングのタイミングとしては、支援計画作成または修正後、6ヶ月に1回以上モニタリングが必要となっていきます。

基本的には、保護者と事業所職員と面談で行います。

内容としては、目標は達成できたかどうか、達成できなかった場合、なぜ達成できなかったのかを分析します。支援内容も適切であったかを評価します。

保護者の思いや希望を確認し、目標の修正や新たな目標を話し合っていきます。

モニタリングは、療育の先生とお話しできる大切な機会であり、子どもの状況を理解し、家庭でのかかわり方について学ぶことができます。

・安全確保

サービスの提供中に起こり得る事故や怪我などを事前に防止する為、日ごろから施設や備品の安全性を点検する必要があります。

補修補修を行ったり、新しいものへ交換などを行います。

事故が発生してしまった場合や、事故となりうる事態となった場合は詳細に記録し、事故事例やヒヤリハット事例として職員内で情報共有をしていきます。

・活動内容の立案

サービスを提供するにあたって、利用者一人一人のニーズに合わせ活動内容を立案する必要が有ります。

活動内容は利用者の障害や特性、環境などを考慮し、発達支援を行う時間が十分確保できる様にしていきます。

内容を組み立てる際には他の指導員とチームとして作り上げていきます。

活動の内容が固定化してしまうと、利用者の活動が限られてしまうため様々な活動内容を組み合わせる必要があります。

・児童発達支援管理責任者自身と事業所職員への知識と技術の向上

サービスを適切に提供する上でサービスの役割、利用者の発達状況、特性、障害の内容、法令等の制度、関係機関、地域の状況などを理解しておく必要が有ります。

職員へは適時、技術的な指導や助言などを行い、知識、技能の向上を促していきます。

場合によっては、講習会や勉強会などの実施も行っていきます。

児発管本人も、積極的に自治体や事業所外で行われる研修や勉強会に参加することが望ましいです。

・適切な支援の提供

各サービスの目的を理解し、適切な支援の提供を行っていきます。他の指導員に支援への理解を求めるのも業務となります。

支援の開始前には打ち合わせなどで、「通所する児童」「支援内容」「役割分担」などを確認します。

支援終了後にも振り返りを行い、支援内容、気がついた点や問題点を指導員間で共有し支援記録として残します。

支援の最中には、通所児童の状況、指導員の状況、環境にも注意をして状況を把握する必要が有ります。

・保護者からの相談支援

保護者が悩みなどを抱えている場合には、相談に応じて助言などを行う事も必要です。

保護者は自分の子どものことしか分かりませんが、児発管は多くの子どもの発達支援に関わることから、様々な面でのアドバイスが行えると思います。

具体的な解決案が出なくても保護者は他人に悩みを打ち明けることが出来た、というだけでも安心することもあります。

相談を受けた際には親身になって悩みを聞いてあげることが重要になります。

・関係機関連携

関係機関は、子どもの福祉に関連する機関や専門家のことを指します。

児童相談所、児童家庭支援センター、子ども家庭支援センター、保健所、学校、医療機関などが含まれます。

また、医師、保健師、保育士、社会福祉士、臨床心理士なども関係者として連携に参加します。

また、連携の重要性は高く、子どもや家庭をめぐる問題は複雑で多様化しており、早期発見や適切な対応、きめ細かな支援が必要です。

都道府県(児童相談所)や市町村との連携はもちろんのこと、

福祉事務所、発達障害者支援センター、児童福祉施設、里親、児童家庭支援センター、配偶者暴力相談支援センター、社会福祉協議会など

さまざまな機関と連携を図り、ネットワークを構築することが必要です。

・苦情の解決

サービスにおいて利用者や保護者から苦情などを受けた場合には、速やかに処理を行っていきます。

通常の事業所では苦情対応窓口に担当が設置されていると思いますが、話がまとまらない場合には、都道府県や政令指定都市などの担当窓口を紹介する必要も有ります。

・秘密の保持

業務上知りえた事業所に関する情報や、個人情報の秘密保持を職員に周知徹底します。

改正される個人情報保護法では、個人情報を保持する企業全てが対象となるため、意図的に個人情報を漏洩した場合には法律により罰せられます。

また、関係機関や他の事業所等に利用者等の情報を提供する際には、本人または保護者に同意を得る必要があります。

・緊急時の対応

サービス提供時に事故や怪我や急病などが生じた際のために、緊急時対応マニュアルを作成し従業員に周知徹底をしておく必要があります。

実際に事故等が発生した場合には緊急事対応マニュアルに添って行動ができるよう、日ごろから訓練を行っておきます。

程度により、見守り、服薬、救急搬送、保護者への連絡などがそれぞれあると思いますので、利用者一人一人の対応方法を他の指導員と共に確認します。

災害時も同様で、地震対応マニュアルや火災対応マニュアルの作成、地域の避難場所の確認などを行っておきます。

半年に1回程度の避難訓練も行い、避難経路の確認、防災用品の準備と点検なども行っていきます。

・虐待の防止

施設内での虐待を防止する為に、虐待防止研修や、虐待防止チェックリストなどを作成して虐待防止の意識を高めていく必要があります。

児発管本人も都道府県などが開催する虐待防止研修などに参加し、その内容を周知するのも良いです。

施設の従業者が虐待をしているのを発見した場合には「障害者虐待防止法第16条」の通報義務に基づき、市区町村に通報していきます。

上記16条では通報者が不利益を被らないように「通報者の保護」についても規定されています。

また、家庭や他の施設などで虐待を受けているのを発見した場合には都道府県や市区町村の福祉事務所や児童相談所に通告する必要があります。

・身体拘束の実施、管理

身体拘束とは利用者を押さえつけて行動を制限したり、自分の意思で外部に出られない部屋に隔離することを言い、緊急でやむを得ない場合を除き禁止されています。

やむを得ず拘束する場合は、本人または周囲の人が怪我や事故に繋がる恐れがある場合となっています。

やむを得ず身体拘束を行う可能性が有る場合には事前に、代替手段の検討やどのような場合にどの方法で拘束を行うかを事業所の組織として検討していく必要があります。

身体拘束を行う際には事前に保護者または利用者本人に事情を説明し同意を得る必要があります。

身体拘束を行った際には記録を残し、保護者に報告する必要があります。