療育現場で働く⑥言語聴覚士編 資格取得の方法や療育施設での役割・仕事内容をご紹介!
◆言語聴覚士とは
言語聴覚士は「話す」「聞く」といった言葉によるコミュニケーションに問題がある方に専門性の高いサービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。
具体的には脳卒中後の失語症や構音障害、聴覚障害、言葉の発達の遅れ、声や発音の障害など、その対象は多岐にわたります。年齢も小児~高齢者までと幅広い層へ支援を行います。
言語や発声だけではなく、食事の際の咀嚼運動(食べ物を噛む)や嚥下(食べ物を飲み込む)といった摂食動作の過程に困難さがある人にも支援を行います。
◆言語聴覚士になるためには
言語聴覚士は1997年に国家資格として制定され、理学療法士や作業療法士と同様のリハビリテーションにおいての専門職です。
言語聴覚士になるには必要な知識と技能が習得できる3年制もしくは4年制の大学、短大、専門学校を卒業し、国家試験に合格する必要があります。
毎年1千6百人から2千人程度が合格し、有資格者は2023年3月には4万人近くとなりました。
◆言語聴覚士の仕事
言語聴覚士は主に言語障害(失語症、構音障害、高次脳機能障害)や聴覚障害、言葉の発達の遅れ、声や発音の障害など、
言葉によるコミュニケーションの問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために評価を実施し、必要に応じた訓練、指導、助言、その他の援助を行う専門職です。
また、医師の指示のもとで人工内耳の調整なども行います。下記に言語聴覚士が対象とする障害について簡単に紹介します。
・言語障害:上手く話せない、話が理解できない、文字が読めない
・高次脳機能障害:忘れやすい、思い出せない、気が散りやすい、複雑な内容を手順通りに進められない
・音声障害:声がでにくい、声がかすれる
・構音障害:発音がはっきりしない
・嚥下障害:上手に噛めない、上手く飲み込めない
・聴覚障害:相手の声が聞き取れない、何度も聞き返す
これらの障害の改善を図るために、言語聴覚士は必要な専門職であるといえます。
◆言語聴覚士が活躍する領域
言語聴覚士は医療施設だけではなく、福祉・保健施設・教育機関など幅広い領域で求められる専門職です。
専門性の高さからどの領域でも言語のエキスパートとして頼られるでしょう。言語聴覚士が活躍する領域は以下のものがあります。
・医療施設
言語聴覚士の半数以上が医療分野に携わっていると言われています。
特に病気や事故などで言語障害や嚥下障害を患った人のリハビリテーションで活躍しています。
医療分野として大学病院、総合病院、専門病院、リハビリテーションセンター、地域委員、診療所などが主な活躍の場です。
・保健施設
保健施設でも医療分野と同じく言語聴覚士の需要が高いと言えます。
訪問リハビリテーションやデイケアセンター、介護老人保健施設、訪問看護事業所など、言語や聴覚、嚥下に関する専門的なサポートをするのが主な仕事です。
・福祉施設
福祉分野においては特別養護老人ホームや重症心身障害児施設などで言語や聴覚、嚥下に関する評価や指導などの業務を担う言語聴覚士が多いです。
その他にもデイサービスや児童発達支援施設、肢体不自由児施設などでも活躍しています。
・教育機関
教育機関では、小中学校、特別支援学校、研究施設、言語聴覚士教育施設などで活躍する言語聴覚士が多いです。
小中学校や特別支援学校では言語障害や吃音などの改善に取り組むケースが多い傾向にありますが、教育分野に関してはまだまだ言語聴覚士の配置が少ないのが現状です。
◆療育における言語療法士の役割
言語聴覚士が活躍する領域について説明しました。その中でも療育が必要となる児童発達支援施設や放課後等デイサービスにおいて言語聴覚士が求められる役割は以下の通りです。
・言葉の知的発達の遅れの有無
・対人関係の障害の有無
・構音障害の有無
・吃音をはじめとする音声障害の有無
これらに対する評価や訓練が療育分野では言語聴覚士に求められることが多いでしょう。
このほかには聴覚障害を持つ子どもに対して検査や訓練、補聴器のフィッティングをサポートすることもあります。
◆療育における言語療法士の仕事内容と1日のスケジュール
発達支援では、児童指導員や保育士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理士などがチームになって療育に取り組みます。
言語聴覚士は言語聴覚指導の業務もありますが、その他にも遊びや食事などを通して、子どもたちの発達を評価、指導する必要があるため様々な形で子どもたちと触れ合います。
療育における言語聴覚士の一般的な一日の流れとして、児童発達支援施設での働き方を以下に紹介します。
8:30~9:00ごろ 利用児童が施設へ到着
9:00~10:00 健康状態のチェックや療育準備のサポートなど
10:00~11:00 療育プログラム(個別もしくは集団での療育)
11:00~11:15 おやつ(ここで実際に評価などを行うこともあります)
11:15~11:45 療育プログラム
11:45~12:00 退所準備のサポート、帰りの会など
12:00 退所(お迎えにきた保護者へ現状の様子について報告する。相談を受けることも。)
発達支援センターや児童発達支援施設では小学校就学前の子どもたちを対象としているため、紹介した流れで一日の業務に当たることが多いでしょう。
放課後等デイサービスでは子どもたちが学校を下校した後に利用している子どもたちが集まり、療育プログラムを実施することになります。
◆言語療法士にとって療育業界で働くメリット
言語聴覚士は様々な領域で活躍できる資格ですが、療育分野で働く際には以下のメリットがあります。
・専門性の高い言語聴覚療法ができる
発達障害を抱える子ども達のなかには構音障害や言語発達遅延、吃音症などに悩む子どもや保護者も少なくありません。
言語聴覚士が発達支援の現場に在籍することで、これらの障害や症状に対する専門性の高い療育が可能になります。
言語や聴覚は非常に複雑に成り立っているため、専門性を持って勉強してきた言語聴覚士が強く求められます。
・求人数が多い
発達障害はこれまで「扱い難い子」「少し変わった子」などと評されることも多く、近年急激に障害の解明が進んでいます。
その中で、発達障害の診断を受ける子どもの数は右肩上がりとなっており、早期療育が効果的と言われる中で発達支援センターや発達支援事業所の少なさが問題になっているのが現状です。
その中でも、言語聴覚士の需要は非常に高く、近年の診療報酬改定では、発達支援事業所における言語聴覚士の配置に加算項目が設けられたのも需要の高まりを後押しする結果となりました。
専門的支援加算として、言語聴覚士を配置したいという事業所は多く、求人数の多さや優遇条件なども見られます。
・スキルアップにつながる
療育分野では基本的にチームで支援に取り組みます。
児童指導員、保育士、作業療法士、心理士など他分野のスタッフと意見交換を行う機会も多く、幅広い知見を得ることもできるでしょう。
また、発達支援センターなどの場合は医療機関や児童相談所、地域の幼稚園や保育園などさまざまな機関との連携を持って包括的なサポートにも取り組みます。
発達支援や福祉、地域連携など、他の分野では学ぶ機会の少ないシーンで実践的にノウハウを身に付けることができます。
療育分野での経験は、言語聴覚士としてのスキルアップにも繋がるでしょう。
◆療育分野に向いている言語聴覚士の特徴
言語聴覚士が療育分野で働く場合、以下のような特徴を持つ人が向いているでしょう。
・子どもが好きな人
子どもと関わることが好きな人は療育分野に向いています。
幼児との関わりが好きな人は発達支援センターや発達支援事業所、児童との関わりが好きな人は放課後等デイサービスに向いているでしょう。
特に、言語聴覚士の資格を持っているものの出産を機に離職した経験のある人は、療育分野で育児経験などを活かして働くこともできます。
・洞察力のある人
療育分野では特に子ども達の様子を注意深く観察し理解できる洞察力が求められます。
まだまだ未熟で、自分の気持ちを発信する方法すら分からない子ども達の様々なサインを読み取ってあげる必要があるでしょう。
普段から人を観察することが得意な人や、人の考えを瞬時に把握できるスキルの高い人は発達支援の分野に向いています。
◆言語療法士として療育業界で活躍しよう
人間同士のコミュニケーションをとして欠かせないのが言語聴覚能力です。
言語聴覚士はそんな重要なコミュニケーション能力の開発、サポート役として欠かせない専門職です。
また、日常生活を行う上で欠かせない食事場面において飲み込みや咀嚼運動のサポートを行うことは、その人の生活をより豊かにするためにとても大切な支援の1つと言えます。
療育業界には言語聴覚士を必要としている子どもたちが数多くいます。是非、言語聴覚士としての知識やスキルを療育分野で活かしてみませんか。